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学校だより

イエズス会4校合同錬成会

去る8/19(月)~8/22(木)の期間、神奈川県秦野市にある上智大学短期大学部内の秦野セミナーハウスにて、イエズス会4校(※1)合同練成会「Ignatian Student Leadership Forum(ISLF)2024夏」が行われました。

ISLFとは、イエズス会4校の生徒が集い、イグナチオ的教授法(※2)に沿ってイグナチオ的リーダーシップ(※3)を体験的に学ぶ研修で、神父様および過去にISLFに参加したOBOGの大学生が中心となって催されています。

※1 イエズス会4校:本校、神奈川県の栄光学園中学高等学校、兵庫県の六甲学院中学校・高等学校、福岡県の上智福岡中学高等学校

※2 イグナチオ的教授法:聖イグナチオ・デ・ロヨラ(カトリック修道会イエズス会の創立者で初代総長)によって見出された、学びの場において「体験」⇒「内省」⇒「実践」⇒「評価」 というサイクルを繰り返しながら、真の意味で「知る」というプロセスを歩むこと

※3 イグナチオ的リーダーシップ:イエズス会教育におけるリーダー像「仕えるリーダー」としての能力で、「識別」「分別ある愛」「不偏心」「反対のことを(あえて)する」「より大きな望みを引き出す」「一人一人への配慮」「使徒職に対する世話・配慮」という7つの言葉で特徴づけられる

本校からは高2が2名、高1が7名参加しました。

ISLFは今年の春休みにも行われており、今回は第2弾という位置づけです。毎回テーマを決めて様々なプログラムを体験します。

今回のテーマは「Beyond the Border」です。体験プログラムを通して、自分をとりまく環境や他者との間に感じるBorder(壁、距離感、境界)を発見し、内省・分かち合いをする中でそのBorderを意識化していくことを目指します。ただし、「Borderを越える」ことをゴールや目的にしているのではなく、自分の感じるBorderに気づき、Borderの向こう側に向かおうとする歩み自体を重視しています。

1日目 アイスブレイキング

夕方にセミナーハウスに到着し、自己紹介・夕食のあと、Borderを自分のペース・スペースの観点から観察するプログラムを体験しました。

それぞれの人間は、自分にとって心地良いペースが異なり、またパーソナルスペースの広さも異なります。このプログラムでは、まず歩いてみて「自分にとって心地いい歩くペース」を探し、その後限られたスペースの中で歩く体験をしました。限られたスペースにたくさんの人がいると、自分にとって心地よいペースとスペースを保つことは難しくなります。このときの心の動きを振り返って、なぜ自分はそう思ったのかをじっくり考えました。

初日の終わりに、皆で今回のISLFのテーマソングの練習をしました。

ギターを弾いているのは、以前本校にも赴任されていた森晃太郎神父様です。

2日目 アウティング(東京散歩)

2日目は、OBOGの大学生、4校の生徒、教員で構成される各グループで都内を散歩し、東京にある様々なBorderに意識を向けるプログラムを体験しました。

各グループには、以下のミッションが課せられました。

①各自、自分が「Border」を感じたときの写真を1枚撮影する

②各自、自分にとってグループの最高な写真を1枚撮影する

③グループで協力して、参加者全員へのプレゼントを購入する

筆者が参加したグループでは、主に六本木の街を散策しました。

各校の生徒たちは、東京の景色を見ながら、それぞれ自分の地元の話をして盛り上がっていました。普段と異なる環境におかれたことで、普段自分が過ごしている環境を強く意識したようです。

グループの人々と行動を共にして食事をして親しくなり、お互いの背景や考え方の違いを楽しく分かち合うことができました。このように楽しい時間を過ごせたのは、道案内をしてくれたり皆を盛り上げたりしてくれたOBのOさんとOGのSさんのおかげです。本当にありがとうございました。

セミナーハウスに帰ってから、自分たちで撮影した写真を見ながら今日1日を振り返って、自分の心の動きを静かに見つめる内省の時間が設けられました。

ISLFでは、このように振り返りの時間が非常に長く取られています。イグナチオ的リーダーシップを特徴づける7つの言葉の中でも、特に「識別」(簡単に言うと、心が様々な状態にあるときに、それを見つめ、なぜなのか・どうしてそうなったかを知ること)を行う場面が多いと感じました。

3日目 振り返りと分かち合い、そしてRe・Creation Night

全員がISLF-Tシャツを着て写真撮影をした後、まずは個人の振り返りを1時間程度行い、それからグループで分かち合いをしました。引率教員も1つのグループとなって分かち合いを行いました。ISLFでは、例えば修学旅行などで教員が担っているような仕事は大学生のOBOGがやって下さるので、初めは何となく手持ち無沙汰で落ち着かない気持ちでしたが、余裕があった分自分の心の動きをじっくり見つめて考えることができました。他校の引率の先生方も同じように感じていたようでした。

その後、ISLFの中でもメインイベントといえる「Re・Creation Night」の準備のために、各グループから出題するゲームの内容を考えました。

夕食後、いよいよ「Re・Creation Night」が始まりました。まず各グループで買ってきたお土産を発表し、その後は各グループで考案した多様なゲーム(レベル別の方言クイズ、癖のある伝言ゲームや貿易ゲーム)で遊びました。

明日はいよいよ最終日です。あっという間の数日間だったと感じている人が多いようでした。「Re・Creation Night」が終わって解散した後も、広場でお土産のお菓子を食べながら語り合う人々の姿がたくさん見られました。東京散策、議論や交流を通じて、4校の生徒たちは友情の絆を深めたようです。

4日目(最終日) 教会でのミサ体験

朝食後すぐにセミナーハウスを出て、バスで四谷に向かいました。秦野セミナーハウスは都心から外れた自然豊かな場所にあり、俗世から離れて練成会を行うのにはぴったりの場所でした。生徒にとって思い出の地になったことでしょう。

ミサ体験は、上智大学に隣接するカトリック麹町 聖イグナチオ教会のザビエル聖堂で行われました。

この日のミサを司式するのは本校の越智神父様です。ミサでの説教の場面では、「Borderは越える必要はない。自分のBorderも他者のそれも尊重されなければならない。しかし、互いのBorderが交わるところで手を取り合って分かち合うことはできる」という、ISLFの終わりにふさわしい力強いメッセージをいただきました。

ミサ後は上智大学のキャンパス内で立食パーティーが行われ、この数日間を振り返って互いに労い合いました。

最後に、今回のISLFのフロントマンである森神父様からお話をいただき、OBOGの皆さんから一言いただいた後、解散となりました。解散後も、親しくなった4校の生徒たちは各自しばし残って交流をしたようです。


今回、様々な方々のお話を伺う機会に恵まれました。その中で、特に印象的だったものを紹介します。

まずは山内神父様のお話です。山内神父様は、少し前までロヨラハウスというところで高齢の神父様の介護をされていました。そこにおられる神父様の中には、認知症の方もいらっしゃいました。「一般的に認知症はネガティブなイメージがあるが自分はそうは思わない、人生の終わりに、幼子のようになるのは意味があると考えている」と仰っていました。

もう一つは、大学生スタッフのOさんのお話です。聖書に関する話題の際に「自分はイエスが復活したとき、トマス(弟子)に傷跡を見せて自分だと示す場面が好きである(新約聖書・ヨハネによる福音書20章24-29節)。傷や後ろめたいことを隠して抱えている人はこの世界で多い。傷を見せたキリストの姿勢はそうした人々の救いになると思う」と仰っていました。

お話を伺った際、弱さや傷といったものに対するお2人のまなざしに、目が開かれるような思いがありました。生徒たちも、多様な人々と交流する機会を得て、既存の価値観が変容するできごとがあったかもしれません。


この数日間で、参加者は自分が世界や他者に感じているBorderを意識し、そしてそのBorderは人によって異なると認識することができたと思います。「互いに異なり合いながら、尊重し合う」ことの大切さを学んだ夏でした。

森神父様、越智神父様、山内神父様、大学生スタッフの皆さま、協力してくださった皆様、ありがとうございました。