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講話

3月1日 朝礼

 おはようございます。
 早いもので、今日から3月です。ちょうど去年の今頃、全国の学校が一斉に休校になり、本校でもコロナとの闘いが始まりました。それから1年、今まで通りにはできないことがたくさんありましたが、それでも目の前のことに、自分なりに一生懸命に取り組んできたという生徒もいれば、なかなかそうはできなかったという生徒もいるでしょう。いずれにしても、最後はいい形で終わり、次の1年に繋げていきたい。そのために、学年末試験の準備をしっかりとやってください。次の1年に繋がるかどうかは、試験の結果によるのではなく、どんな準備をしたかということによるものだと思います。一生懸命に準備をしてください。

 さて、このところ朝礼では「喜び」「祈り」「感謝」について話をしてきましたが、今朝は、星野富弘さんの詩を紹介します。
 星野富弘さんのプロフィールや作品はみんなもよく知っているかと思いますが、あらためて紹介すると、星野さんは現在75歳の詩画家です。24歳で中学校の体育の先生になりましたが、その3か月後にクラブ活動中の事故で首から下の自由を失いました。自分ひとりでは食事はできず、トイレにも行けず、病院で寝たきりの毎日になりましたが、2年後、看護学生のアドバイスで、口くわえた筆で初めて「ア」という一文字が書けたそうです。
 手足の自由を奪われ、生きていても仕方がないと自暴自棄になっていた星野さんにとって、それは本当に大きな喜びで、「目の前がパァーッと明るくなった」と後に書いておられます。そして「小さな地味な基礎を積み重ねていけば、口でだってきっと美しい文字が書けるようになる」という思いで、口に血をにじませながら毎日練習を繰り返したそうです。やがて、文字だけでなく花の絵なども描いて、その絵に詩を添えるようになりました。
 また星野さんは、お見舞いで貰った聖書を読むうちに、聖書からもたくさんのものを受け取るようになり、事故から4年目に、キリスト教プロテスタントの洗礼を受けました。それからは、絵に聖書の教えや言葉を添えることも始めました。
 入院生活は9年間に及びましたが、退院後も口にくわえた筆で創作活動を続け、多くの作品を出版し、展覧会も開催しておられます。我が家も何年間もずっと変わらず、星野さんのカレンダーを愛用しています。星野さんの作品には、優しさやあたたかさ、生かされていることへの喜びが溢れていて、それらは聖書の教えに通じるものがあると私は感じます。

 星野さんの紹介が長くなりましたが、このような詩です。

    笑顔で挨拶を交わし
    小さなことにもよろこび
    嘘を言わず
    悪口も言わず
    全てのことに感謝し
    人のしあわせを祈る
    一月一日の気持ちを
    皆がみんな
    十二月三十一日まで持ち続けていられたら
    美しい国になる                  (星野富弘 花の詩画集『速さのちがう時計』より)

 これは、廊下に掲示しているパウロの言葉を作品にしたものでしょう。「美しい国」は、パウロがテサロニケの信徒を励ましたように、喜び、祈り、感謝を365日大切にする人たちの集まる国のことで、天国とか神の国のことだと私は思います。

 パウロの言葉通りに「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。どんなことにも感謝しなさい」と言われると、それは無理だといいたくなるかもしれません。だけど「笑顔で挨拶を交わし」とか「嘘を言わず、悪口も言わず」とか「人の幸せを祈る」と言われると、これだってそんなに簡単なことではありませんが、努力目標としては、もっと身近なものに感じられます。星野さんはご自身の体験から、パウロの言葉を星野さん風に優しく、温かく、私たちに伝えてくれていると思います。
 「笑顔で挨拶を交わす」「噓を言わず、悪口も言わない」「人の幸せを祈る」毎日この中の1つでも2つでも心掛けていけば、自分自身が幸せになるでしょう。パウロの言葉と合わせて、この詩も心に留めておきたいと思います。