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講話

3学期終業式

 64期生の皆さん、中学卒業おめでとう。
 君たちは、広島学院中学校卒業と同時に、9年間の義務教育課程の終了という大きな節目を迎えました。4月からは自分の意志で、自分で希望して、高校生活を始めることになります。中学生から高校生へとただ呼び方が変わるだけでなく、中身も変わっていかなければなりません。勉強やクラブ、課外活動、学校行事など、色々な場面でより高いところを目指していこうという決意を新たにして、今日の卒業証書を受け取ってください。

 さて、3月11日で、東日本大震災の発生から11年が経ちました。復興庁が先月出した資料によると、地震や津波の被災地域は、今は被災者の心のケアやコミュニティー作りなど、復興の総仕上げの段階にあるとのことです。だけど原発事故の被災地域は、まだ復興や再生が本格的に始まった段階で、2020年代をかけて住民が帰還できるように取り組んでいるそうです。
 一方、福島第一原発では、廃炉作業のうち、使用済みの核燃料の取り出しについては、まだあと10年程度はかかるようです。汚染水対策については、放射性物質の大部分を取り除いて敷地内の大型タンクに保管している大量の処理水を、さらに充分に水で薄めて、来年春以降に海に放出する方針が決まり、準備が始まっています。ただ、国の内外でなかなか理解は得られず、計画通りに進むかは不透明だそうです。溶け落ちた燃料デブリについては、取り出すためのロボットアームがようやく完成し、今年の秋にも試験的な取り出しが始まる予定です。デブリの総量は880トンと推定されていますが、まずは1グラム程度を回収しながら、まだよく分かっていない原子炉の内部やデブリの様子を把握していくとのことで、本格的な取り出しが始まるまであと数年はかかるようです。
 今の科学技術をもってしても、このように原発事故の処理は困難を極め時間がかかるということ、そしてその地道な作業に、使命感を持ち人生をかけて取り組んでいる人たちがたくさんおられるということを、私たちはよく知っておかなければなりません。さらに、この未曾有の大災害と悲惨な原発事故を風化させてはいけないということも、よく意識しておきたいと思います。

 話は変わって、今日はもう1つ触れておかなければならないことがあります。今ウクライナで起こっていることについてです。ロシアはその正当性を主張していますが、隣国を一方的に武力攻撃し、町を破壊し、住民の日常生活を奪い、多くの犠牲者を出してもなお激しさを増すこの軍事侵攻は、決して認められるものではありません。原発や他の原子力関連の施設、病院や学校なども攻撃の対象にしており、目的のために手段を選ばないロシアの指導者に強い怒りを感じます。
 また、核大国が核の脅威をちらつかせながら暴力によって現状を変更しようとしていることにも、とんでもない恐怖と怒りを感じます。この現実を見ても、核兵器は決して存在してはいけないものだということが、はっきりと分かります。特に私たち広島で学ぶ者は、広島や長崎の惨禍が繰り返されることのないよう、一層強く願い祈らなければなりません。
 前回の朝礼で、創世期の天地創造にある「見よ、それは極めて良かった」という言葉を紹介しました。朝礼でも話したように、この言葉とは全くかけ離れたことが、起こっています。しかし、この言葉はいつかは実現されるべきものだと信じれば、そこに希望は生まれます。この希望はとても大事なものだと、私は思います。
 今朝の中国新聞に、本校の53期卒業生で、ハンガリーのウクライナ国境の町で、逃れてきた人たちの医療支援に取り組んでいる医学生の記事が載っていました。「遠く離れた日本でも、関心を持ち続けてほしい」とのことです。
 本校では先日、ウクライナの人々のための募金活動が行われ、多くの生徒の協力で、14万円余りを送ることができました。その他、今、私たちができることは、この先輩も言っているように、実際に起こっていることに関心を持ち、真実を知ろうとすること、そして希望を持って平和を願い祈ることです。そういった願いや祈りは、遠く離れた人たちにも通じ、その人たちの力になるものと私は思います。そのような人と人との繋がりを、私たちは大切にしなければなりません。

 2021年度が終わります。心配なニュースもありますが、みんなそれぞれこの一年、これはと思うことに一生懸命に取り組めたか、人との関係はどうだったか、よく振り返ってもらいたい。そして、次はどんな一年にしたいのか、どんな自分になりたいのか、考えてもらいたい。いい新年度を迎えることができるよう、春休みの間に、頭も心も体もしっかりと準備をしておいてください。

 終業式の話は以上ですが、最後に1点お知らせすることがあります。私はこの3月31日で、校長を退任いたします。9年間という結構長い間、一生懸命にやってきましたが、至らない点もたくさんありました。生徒に助けられたと思うことも度々ありました。感謝しています。4月からは週に4日、数学の教員として勤めます。どこかの学年の生徒とは引き続き顔を合わせることになりますが、よろしくお願いします。
 なお、後任の校長先生は国語の中間先生です。 生徒と一緒になってグランドを走る元気と心意気を持った頼もしい先生です。4月からの学校生活を、ぜひみんなも楽しみにしておいてください。