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講話

1月17日 朝礼

 おはようございます。
 今朝はこの後すぐに高2は模擬試験があるので、短めの話をします。

 廊下には、先学期からずっと「見えないものに目を注ぐ」という新約聖書の言葉を掲示しています。12月の初めには、最期までこの言葉を大切にして生きた永井隆博士の話をしました。学期をまたいでしまいましたが、もう少しこの言葉について考えたいと思います。

 フランスの作家サン=テグジュペリの小説「星の王子さま」の中に、「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだよ」という言葉が出てきます。読んだことのある生徒も多いでしょう。「見えないものに目を注ぐ」に通じる言葉だと私は思います。
 この小説の中では、よく大人と子どもの、ものの見方や考え方の違いが語られます。大人は目に見える表面的なことで物事を判断しがちだが、子どもは心に感じることを大事にするという違いです。みんなは子どもと大人の間の年代ですが、どうでしょうか。
 遠い星からやって来た少年の王子様は、あるバラの花との関係について、見た目が美しいから自分にとって掛け替えのない存在だと思っていたけど、実はそうではなく、時間をかけて世話をする中で愛情が生まれ、絆が結ばれて掛け替えのない存在なったのだということに気付きます。そんな王子様に、秘密を教えてあげると言って狐が語ったのが、この「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだよ」という言葉です。

 かつてハーバード大学で75年間もかけて幸せについて調査研究を積み重ねた結果、分かったことは大変シンプルで、結局「良い人間関係」を築くことが最も大きな幸せの要因だったそうです。その通りだろうと私は思います。サン=テグジュペリも、「本当の贅沢というものはたった1つしかない。それは人間関係に恵まれることだ」と言っています。
 大人になるほど、見た目の容姿や学歴、職業、また国籍や宗教などで、相手がどんな人かを勝手に決めつけてしまうことがあるかもしれません。それでは人間関係に恵まれることはない。時間を共有し、心を開いて関われば、優しさや温かさ、思い遣りといったものが見えてきます。善いものばかりでなく悪いものも見えてくるでしょうが、それも含めて、肝心なことが見えてくる。そして良い人間関係を築くことができる。分かり易いことですが、難しいことかもしれません。

 こういった人との関りに限らず、私たちは、実際に目に見えるものだけを信じ、目に見えるものだけに頼りがちです。だけど、例えば具体的に目に見える成果や数字ばかりを気にして見ていても、次への成長はありません。結果に至るまでの過程をよく振り返らないといけない。ここでいう振り返りとは、ただあった事実を思い出すだけでなく、自分の心の声に耳を傾け、心に感じたことや心の動きをよく思い出して、それについて静かに考えることです。内省とかリフレクションともいい、イエズス会の教育で大切にしていることです。それによって、成長に繋がる肝心なことが見えてくるものです。

 目に見える現実をその通りに正しく捉えることはもちろん重要なことですが、それだけでは肝心なものが見えないというのも、確かだと思います。心に感じる思いや感情にもしっかりと目を注ぎながら考えることを、心掛けたいと思います。