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講話

1学期終業式

今日で1学期が終わります。授業ばかりの毎日が続きましたが、みんな普段、授業以外にどの程度勉強をしているのか、6月に実施した生活実態調査の結果を見せてもらいました。それによると、毎日平均して2時間以上勉強をすると答えた生徒の割合は、中1は6割を超え、中2でかなり減り、中3が25%程度、高1で少し回復し、高2は半分ほど、高3は2時間以上は当然という、今年も例年と同じような傾向で、中2から高2までは物足りない生徒も多い。一方で、中3ぐらいから、携帯やネットの時間がかなり増え、その分睡眠時間は減ってく。これも例年通りですが、時間を随分無駄にしていないかよく考えてもらいたいと思います。

 さて、2週間ほど先の7月31日は、カトリック教会の聖人で、イエズス会の創立者であるイグナチオ・デ・ロヨラの記念日です。イグナチオの生涯について、大きな出来事だけごく簡単に紹介すると、1491年頃にスペインで生まれ、若い頃は世俗の虚栄に溺れ、兵士として武勲を立てて名誉を得たいということばかりを考えていたようです。
 しかし30歳の時に戦闘で重傷を負い、療養生活に入り、そこで「キリスト伝」と「聖人伝」という書物に出会います。他に書物がなく暇つぶしに読んでいましたが、繰り返し読むうちに少しずつ心が動かされます。今までの生活を反省し、聖人たちのようにイエス・キリストに仕える生活を送りたいという思いが芽生え、その気持ちが大きくなっていきました。

 1年間の療養の後、傷の癒えたイグナチオは全く別人になっていました。キリストを主君と仰ぎ、世俗的な生き方と決別することを誓い、バルセロナ近郊のマンレサという町で1年間、瞑想や修行の日々を過ごします。その中で、神秘的な体験を重ねました。その体験をもとに書かれたのが「霊操(Spiritual Exercise)」という本です。この「霊操」は、自分を知り、神を深く知るための手引書で、私たちが物事を知るプロセスにも当てはめることができる、それを実践しようというのが「Ignatian Pedagogy Program(IPプログラム)」です。

 マンレサを離れたイグナチオは、聖地エルサレムへ巡礼に出かけ、帰国後は約10年間、ラテン語や哲学、神学の勉強に励みました。特に7年間パリ大学で学び、そこでフランシスコ・ザビエルら6人の同志と出会います。彼らもイグナチオの教えを受けて「神の呼びかけに惜しみなく応えたい」という望みを持つようになります。
 そして、イグナチオを含め7人は、生涯を神に奉げることを誓い、当時は異教徒に支配されていたエルサレムに住んで人々のために働くことにしました。しかし諸事情によりエルサレム行きの望みは叶わず、代わりに、ローマ教皇の望みに従って世界のどこにでも行って働くことに決めました。その結果、仲間が宣教活動や教会の改革のために各地に派遣されることになりましたが、離れ離れになっても心の一致をしっかりと保つために、イエズス会という修道会を創立しました。イグナチオが50歳の頃のことです。

 それから亡くなるまでの15年間は、総長としてローマに留まり、世界中に派遣されたイエズス会員一人ひとりの活動を掌握し、的確な指示や励ましを書き送り続けました。460年前の7月31日に亡くなりましたが、その頃にはイエズス会員の数は1000人を超えていたそうです。

 このイグナチオの生涯からリーダーシップを学ぶのが「Ignatian Leadership Program(ILプログラム)」であると始業式で話しました。イグナチオのリーダーシップの根本にあるのは、「自分自身が神に導かれている」という深い信仰です。だからイグナチオと同じような信仰を持ちなさいと言われても、それは困るでしょう。だけど私たちにとっても、決して自分の力だけではない、自分自身も何か大いなるものに導かれているという感覚は、リーダーシップを育てるために大切だと思います。そこから本当の意志の強さや謙虚さ、他者のために役立ちたいという気持ちが生まれるのだろうと、私は思います。
 初代校長は「善きリーダー」になるために必要な「四つの宝」を示しました。その中に「敬虔」の宝があるのも「大いなるものに導かれている」とう心を大切にしなさいということを教えているのでしょう。ILPの授業が始まり、みんなもイグナチオについて学ぶ機会が増えると思います。その生き様の中に、ぜひ「敬虔」も含めて「四つの宝」を見つけてもらいたいと思います。

 夏休みに入ります。この1カ月半、夏休みならではの経験をしっかりと積んでください。その中で何か小さいことでも、家族のため、仲間のため、他者のために、自分の力を惜しみなく役立てるということをしてもらいたい。そういった行いが、身に付けるべきリーダーシップの基本だと思います。
 では、9月1日の始業式に全員が元気に顔を合わせることができるよう、いい夏休みを過ごしてください。